カイロプラクティック・整体の個人事業税問題について

個人事業税って知ってますか?
個人で事業をする人にかかる税金で、都道府県税になります。

個人事業税は、地方税法第72条と政令によって規定された70業種のみが課税される税金です。
従って、70業種以外のものは課税されないというのが特徴です。
株式会社などの法人は、何をしようと利益が上がれば業種に関係なく事業税が課されますが、個人の事業では、特定の70業種のみが課税対象なわけです。

こちらが法で規定された70業種です。

区分 税率 業種
第一種事業 5% 物品販売業 運送取扱業 料理店業 遊覧所業
保険業 船舶定係場業 飲食店業 商品取引業
金銭貸付業 倉庫業 周旋業 不動産売買業
物品貸付業 駐車場業 代理業 広告業
不動産貸付業 請負業 仲立業 興信所業
製造業 印刷業 問屋業 案内業
電気供給業 出版業 両替業 冠婚葬祭業
土石採取業 写真業 公衆浴場業(むし風呂等) 電気通信事業
席貸業 演劇興行業 運送業 旅館業
遊技場業
第二種事業 4% 畜産業 水産業 薪炭製造業
第三種事業 5% 医業 公証人業 設計監督者業 公衆浴場業(銭湯)
歯科医業 弁理士業 不動産鑑定業 歯科衛生士業
薬剤師業 税理士業 デザイン業 歯科技工士業
獣医業 公認会計士業 諸芸師匠業 測量士業
弁護士業 計理士業 理容業 土地家屋調査士業
司法書士業 社会保険労務士業 美容業 海事代理士業
行政書士業 コンサルタント業 クリーニング業 印刷製版業
3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復
その他の医業に類する事業
装蹄師業

一般的に、第一種事業は営業に関わるものとされ、第三種事業は自由業、資格業がほとんどです。

さて、カイロプラクティックや整体は、どこに当てはまるのでしょうか?
【カイロプラクティック業】と【整体業】というのはありません。
当てはまりそうなのは、【あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業】かなと思うのが普通ですよね。
この業種は、ほかの業種と違い税率が3%と低く設定されているのが特徴です。

個人事業税は都道府県税と最初に書きましたが、各都道府県に運用が任されています。
そのため、カイロプラクティックや整体に対して、都道府県によって当てはめる業種が違うという問題が生じています。

このサイトでは、同じカイロや整体を行いながら、各都道府県で個人事業税の業種が異なり、税率も違うため不公平感が生じている問題に対して研究しています。

当サイト独自の調査ですが、カイロプラクティックに対して、以下のように考えて課税されている都道府県があることを確認しています。

課税対象外

これはカイロプラクティックが地方税法と政令で規定されていないため、当てはまる業種が存在しないという考えです。
この考えを採用している都道府県は、全国の約半数あります。

あんまマッサージ鍼灸師、柔道整復師の資格を持つ者がカイロを行う場合のみ課税

これを採用している都道府県も多いです。
あんまマッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師は国家資格ですが、これらのうちどれかを持つ者がカイロプラクティックを行う場合のみ、第三種事業の【あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業】として課税する方式です。

【あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業】は長いので、以下は【第三種事業の3%】と略します。

この方式を採用している自治体でも、さらにいくつかの方式に分かれます。
・整骨院や鍼灸院でカイロを行う場合のみ課税する自治体(いわゆる保険診療の事業と並行して行う場合)
・国家資格を持っていても、カイロ専業だと課税しない自治体
・国家資格を持っているなら、カイロ専業だろうと整骨院の中でやろうと、課税する自治体

【あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業】には特殊な規定があり、いわゆる保険診療で得た収入については、個人事業税の課税対象外だと決まっています。
そのため、柔道整復師や鍼灸師などは、保険診療での収入を分けて確定申告する必要があります。

国家資格を持っていても、カイロ専業だと課税しないという自治体の場合、保険診療分が確定申告書に記載されているかを1つの判定基準にしているようです。
国家資格を持つ場合にはカイロをしようと課税している自治体は、照会文書で免許の有無を確認します。

国家資格の有無に関わらず、カイロプラクティックは第三種事業の3%で課税

第三種事業の3%は、【その他医業】という文言があるので、カイロプラクティックはその他医業であるという考えの自治体です。
これにはちょっと問題がありまして、名古屋高裁の判決で以下のようになっています。

【あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業】は、社会診療報酬を得る業と同等の知識、技能を持つ者が対象である

社会診療報酬というのは、いわゆる保険診療のことです。
つまり柔道整復師や鍼灸師と同等の知識、技能を持つ者が対象である、となっています。

ここがややこしくて、同等の知識、技能というのは、何を以って同等と見なすのかという問題になります。
2で挙げた、国家資格を持つ者がカイロをする場合に課税対象というのは、同等の知識、技能の証明として国家資格が必要だと考えている自治体です。

ここで国家資格の有無に関わらず、第三種事業の3%で課税している自治体は、この【同等の知識、技能】というところの解釈が問題です。

一般に、カイロプラクティックはWHOにも認められ、正規の教育を行う大学もあるわけで、柔道整復師などよりも医学的な知識が上だというのは常識的なことです。
しかし日本では国家資格がないため、同等の知識、技能を証明できないため、このようにカイロプラクティックは国家資格の有無に関わらず第三種事業の3%にするというのは少々無理があります。

請負業として課税

第一種事業の中に請負業というものがありますが、カイロプラクティックは請負業だとして課税している自治体も少数ですが存在します。
これを採用しているのは、当サイト調べでは3県のみで、3つの県に共通するのは、

・国家資格を持つ場合 ⇒ 第三種事業の3%で課税
・国家資格を持たない場合 ⇒ 請負業として5%で課税

このように運用しているようです。

そもそも請負業というのは何なのか?という話になります。
個人事業税の業種について解説している書籍は、平成7年に自治省が著した【事業税逐条解説】くらいしかありません。

事業税逐条解説によると、請負業の定義はこのようになっています。

請負業とは、報酬の取得を目的として、ある仕事の完成を引き受け、これを完成させる事業をいう(民法632条)。
請負業とは、その事業が通常請負契約によって行われるものをいうのであるから、大工、左官、とび職、
植木職、ブリキ職等でたまたま請負契約によることがあっても通常単に自己の労力を提供しこれに対する対
価として賃金を受け取っているにすぎない者の行う事業については事業税を課さないものとすること。なお、
その認定に当たっては、国の税務官署の取扱いに準ずるものであること。

民法632条というのは、請負契約についての条文です。

第632条
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

請負業というのは、民法632条に規定された請負契約によって報酬を得る業だと定義されています。

さて、カイロプラクティックや整体において、施術者とお客様の間にある契約というのは、何でしょうか?
請負契約の場合、仕事の完成を約束するのが特徴です。
カイロでも整体でも、お客様は何らかの身体の症状を改善して欲しくて来院されます。

しかし、症状の改善を約束した契約ではありません。
もし症状が必ず改善するという請負契約を結んだ場合、改善しなかった場合には1円も受け取れません。

医者が行う医業でもそうですが、あくまでも症状の改善を期待して、一定の処置をしてもらうという契約です。
善良な管理者の注意を持ってその業務にあたることで、結果責任は問われない契約をしているのは明らかで、このような契約を準委任契約と呼びます。

さて、請負業の定義は、請負契約により収益を上げる業のみです。
準委任契約が含まれるとはどこにも書かれていません。

いくつかの自治体は、請負業の定義を違法に拡大解釈し、カイロプラクティックや整体のような準委任契約による業に対しても、請負業として課税しています。
これは明確に違法です。

当サイトでは、主にこの請負業への不当課税問題について問題を掘り下げて解説していきます。

※なお、カイロプラクティックや整体を行いながら請負業として課税されている方がいましたら、不服申し立て(審査請求)を行ったほうがいいでしょう。

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