カイロプラクティックや整体を請負業として課税することは問題がある

前回、個人事業税とはどういう税金なのか、解説いたしました。
http://chiro-tax.xyz/archives/5

カイロプラクティックや整体に対して、第一種の請負業として個人事業税を課税している都道府県は、当サイト調べで3県あります。
47都道府県中、たった3県です。

このうち、神奈川県はあはき・柔整の免許を持つものがカイロプラクティックを行う場合は第三種事業の3%で課税し、免許を持たない者は請負業として課税しています。
この問題について、解説していきます。

神奈川県の請負業の定義

神奈川県が請負業の判定基準としているのは、以下のとおりです。

個人の方が行う事業が、次の(1)から(4)の要件をすべて満たす場合は、「請負業」として個人事業税の課税対象となります(注意)。

(1)営業の範囲に属するものであること
(2)資本的経営を行っていること
(3)仕事の計画及び遂行について独立性を有すること
(4)危険負担を有すること

上記要件を満たすかどうかは、所得税申告書や所得税申告書に添付された決算書等の記載内容で判定しますが、お仕事の内容の確認のため、所管の県税事務所からお仕事の内容について(回答)(PDF:8KB)(照会文書)を送付させていただくことがあります。
照会文書へのご協力をよろしくお願いいたします。

注意:運送業、印刷業、写真業、理容業、クリーニング業等も広い意味では請負業に含まれますが、こうしたそれぞれ独立の業種として別に法令で定められているものは、ここにいう請負業には含まれません。

なんだかよくわかんない4つの認定基準を設けています。

さて、個人事業税について公的な文書は、旧自治省(現、総務省)が著した事業税逐条解説という本くらいしかありません。
そこに記されている請負業の定義は、このようになっています。

請負業とは、報酬の取得を目的として、ある仕事の完成を引き受け、これを完成させる事業をいう(民法632条)。(中略)
請負業とは、その事業が通常請負契約によって行われるものをいうのであるから、大工、左官、とび職、植木職、ブリキ職等でたまたま請負契約によることがあっても通常単に自己の労力を提供しこれに対する対価として賃金を受け取っているにすぎない者の行う事業については事業税を課さないものとすること。なお、その認定に当たっては、国の税務官署の取扱いに準ずるものであること。

神奈川県が定める4つの基準ですが、これ自体は実は事業税逐条解説に載っている4項目です。
ただし、この4項目は、あくまでも雇用なのか個人事業なのかを判定するための4項目であって、この4つを満たしたから請負業というのはあり得ません。

危険負担というのは、カイロプラクティックにおいては、施術者とお客様のどちらにも責任が無い事情によって、施術を行うことできなくなった場合に、施術者とお客さんのどちらがリスクを背負うかという話です。
例えばですが、お客さんが施術の申し込みを行った後に、火災が起きて避難する必要がある場合、当然ですが施術を提供することが出来ません。
こういう場合、お客さんはサービスを受けていないので代金を支払う必要がないのは明白で、危険負担の考え方では【施術者がリスクを負った】という形になるわけです。

危険負担を有しない職業というのは、恐らくありません。
売買契約だろうと、賃貸借契約だろうと、請負契約だろうと、準委任契約だろうと、双務契約では危険負担を有します。
なので神奈川県が発表している請負業の基準は、世の中にあるほぼ全ての職業が当てはまります。

なので正確に請負業を判定するのであれば、まず請負契約によって報酬を得ている業種なのかを判定し、その上で独立性があるのかという4項目の判定になるべきなわけです。

ここでいう独立性の話ですが、例えば最近増えてきた、激安のクイックリラクゼーション店では、働いているスタッフは正社員ではなく、業務委託を受けた個人事業主であることが多いです。
業務委託を受けた個人事業主と言っても、現実には社員に準ずるような立場なので、会社からの指令を受けて業務を行います。

そういう場合、独立性がないと判断されるため、個人事業税では請負業にはなりません。

ちょっとわかりづらいのはこの事柄です。

大工、左官、とび職、植木職、ブリキ職等でたまたま請負契約によることがあっても通常単に自己の労力を提供しこれに対する対価として賃金を受け取っているにすぎない者の行う事業については事業税を課さないものとすること。なお、その認定に当たっては、国の税務官署の取扱いに準ずるものであること。

これについてですが、いわゆる一人親方の課税問題です。
一人親方の税金ですが、例えば他の一人親方から頼まれて、工事の一部を請け負った場合、形式的には請負契約でも雇用と見なすという国税庁の規定があります。
請負契約だと事業所得になりますが、雇用だと給与所得になるわけで、消費税や源泉徴収の面で違いが出てきます。

なので実質的に雇用と見なす場合は、その分については事業税を課さないと定めていて、その認定は国税庁の通達に従うとしているわけです。

法人税法の請負業との違い

個人事業ではなく法人の場合、業種に関わらず事業税がかかります。
なので個人事業とは違い、業種を判定する必要がありません。

NPO法人などは、税金面で優遇されていて、事業税も課税されません。
これは事業性が無いからです。
ところが、NPO法人などが収益事業を行った場合には、それについては課税しますよという規定があります。
その収益事業かどうかの判定のために、法人税法施行令の中で34業種が挙げられているのです。

その中に請負業という項目があるのですが、法人税法施行令が定める請負業では、請負契約のほか準委任契約も含むとなっています。

法人税法施行令第5条
十 請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)のうち次に掲げるもの以外のもの

イ 法令の規定に基づき国又は地方公共団体の事務処理を委託された法人の行うその委託に係るもので、その委託の対価がその事務処理のために必要な費用を超えないことが法令の規定により明らかなことその他の財務省令で定める要件に該当するもの

ロ 土地改良事業団体連合会が会員又は国若しくは都道府県に対し土地改良法第百十一条の九に掲げる事業として行う請負業

ハ 特定法人が農業者団体等に対し農業者団体等の行う農業又は林業の目的に供される土地の造成及び改良並びに耕うん整地その他の農作業のために行う請負業

ニ 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条(定義)に規定する学校法人がその設置している大学に対する他の者の委託を受けて行う研究に係るもの(その委託に係る契約又は協定において、当該研究の成果の全部若しくは一部が当該学校法人に帰属する旨又は当該研究の成果について学術研究の発展に資するため適切に公表される旨が定められているものに限る。)

法人税法施行令で規定された請負業は、【事務処理の委託を受ける業を含む】という注釈が付いています。
この部分が準委任契約と見なすことができるわけです。

個人事業税は地方税法第72条で規定されていますが、【事務処理の委託を受ける業を含む】という注釈は書いてありません。
なので個人事業税における請負業は、請負契約によって収益を得る業種だけになるわけです。

個人事業税の請負業は、請負契約のみである

近年、個人事業税を取りたいがために、請負契約以外の業種にも請負業として課税されるケースは増えているようです。
多くの人は疑問に持ちながらも、【既に決まったことです】と説明されて泣き寝入りしているようです。

請負業の定義は、

請負業とは、報酬の取得を目的として、ある仕事の完成を引き受け、これを完成させる事業をいう(民法632条)。(中略)
請負業とは、その事業が通常請負契約によって行われるものをいうのであるから、大工、左官、とび職、植木職、ブリキ職等でたまたま請負契約によることがあっても通常単に自己の労力を提供しこれに対する対価として賃金を受け取っているにすぎない者の行う事業については事業税を課さないものとすること。なお、その認定に当たっては、国の税務官署の取扱いに準ずるものであること。

このようになっているわけですので、請負契約だけなのは明らかです。
行政には勝てない、と思って泣き寝入りして不要な税金を払っている人もいるようですが、法的に論破しないと行政は一度決めた決定を覆すことはしません。

なので請負業として課税された方は、自分の行う業種が請負契約なのかをまず確認し、違うと思うなら事業税逐条解説のコピーを添付して、審査請求すべきでしょう。
審査請求は、課税通知から3ヶ月以内しかできませんので、ご注意ください。

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